家路についてた死神を止めたのは、何かの袋を持った1人の少女だった。


「こら!死神!」
「…何だ、失恋少女か」
「し、失礼ね!もう失恋じゃないもん!新たな恋に目覚めた乙女よ!」


ふんと胸をはって見せた少女は、すぐさまこちらへ駆け寄ってきた。


「で、頼みがあるんだけど」
「頼み?」
「これ!あの方に私からって渡しといてっ!」


少女が恥ずかしそうに差し出してきたのは、可愛い包装紙に包まれた長方形の物体だった。


「君から、と渡せばいいのか」
「そう!」
「自分で渡せばいいじゃないか、家はそこだぞ」


ここ、と指差したのは少年の家。そう、ここは少年の家のちょうどすぐ前の道だ。
しかし少女はとんでもないと言わんばかりにブンブンと首を横に振った。


「そ、そんな、そんな事出来るわけないじゃない!」
「何故だ?」
「手渡しで『これ受け取って下さい☆』ってキャー!恥ずかしいじゃないのよーっ!」
「そんなものか」
「そうよ!…あ、そうだ、あんたにはこれ」


少女が死神に渡してきたもの、それは、五円チョコ3枚だった。


「友チョコならぬライバルチョコよ!その黒猫ちゃんと食べなさいよ!じゃっ!」


死神が五円チョコを見つめている間に、少女はダッと走り去ってしまった。


「…コバ、チョコは食えるか?」
「ニャアーン」
「まあ、何事もチャレンジ、だな」


長方形の包みと五円チョコ3枚を持った死神は、すぐそこの玄関へと入っていった。


○ただいま