「ただいま」
「おかえりー」


死神が部屋に入るとそこにはすでに少年がいて、ベッドに寝そべって漫画を読んでいた。
コバがいそいそと椅子の上に座るのを見てから死神は思い出したように長方形の包みを少年に差し出した。


「これ、あの失恋少女からだそうだ」
「へっ?」


少年はバッと顔を上げてその包みを見つめた。目を見開いて、非常に驚いた表情をしている。


「これ…」
「家の前で、君に渡してくれと頼まれてしまってな」
「…本当に僕に?間違いとかじゃないの?」


半信半疑で包みを受け取る少年を、死神は不思議そうに見つめた。


「今日は、プレゼントを渡す日なのか?」
「え?…ああそうか、バレンタイン知らないのか」
「バレンタイン」
「女の子が好きな人にチョコをあげる日…だと思う。今は男があげたり、チョコ以外のものあげたりするのもあるみたいだけど」


死神はやっと今日が何の日なのかを知る事が出来た。


「なるほどな…だから娘達はあんなにはしゃいでいたのか」
「うーん、男にとっては複雑な日だけどね…」


この様子だと、少年は学校では貰えていないようだ。だから、今渡されたこの包みが不思議でしょうがないのだろう。
少年は、綺麗に包まれた包装紙を剥いで中をそっと開けてみた。そこには…。


「…手作り…チョコ…」
「だな。…しかしこれは何の形だ?」


一緒に覗き込んできた死神が尋ねる。少年にもまったく分からない事だったが。
実は少女はハート型に作ったのだが、持ち運ぶ途中に崩れたのか不可思議な形状をしていたのだ。
とりあえず、少年は少しだけそれをかじってみた。


「…うわしょっぱっ!…塩入れちゃったのかな…」
「食べるのが大変だな」


こうやって貰った以上は食べなければなるまい。少年は複雑な表情でうーっと唸っている。
チョコは貰えたが、これはもはや罰ゲームに匹敵するものではないだろうか。
そんな少年を眺めながら、死神は笑って五円チョコを口に入れた。


「自分はライバルチョコとやらで十分だな。なあコバ」
「ニャア」
「何だよそれ…うーしょっぱい…」


こうして、少年のバレンタインは塩の風味と共に過ぎ去っていったのだった。


「…まさか…3月14日には返さなきゃいけないのかな…」
「ん?塩チョコをか?」


ホワイトディまで、あと約30日











バレンタイン特別死神と少年似非ゲーム感覚小説!
の提供でお送りいたしました。
初めての試みにとても時間がかかりました。バランスが難しいですね。内容短いしっ!
今回はこんな形式という事で、フリーではありません。ので、そこんとこよろしくお願いいたします。
こんな細々したのを一つ一つもって帰る人もいないでしょうが(笑)


あと、ちょーっとしたくだらないおまけもつけてみました。本当に少し。くだらなさすぎ。
おまけ−SOAのメンバーにも聞いてみよう−