座談会特別童話 *桃太郎*



●キャスト

桃太郎…ウミ

おじいさん…あらし

おばあさん?…死神

犬…華蓮

サル…少年

キジ…シロ

鬼@…クロ

鬼A…コバ





  昔々、あるところに、おじいさんとおばあさん?がいました。
  ある日おじいさんは芝刈りに、おばあさん?は川へ洗濯に出掛けました。
  おばあさん?が川で洗濯をしていると、川上からどんぶらこどんぶらこと大きな桃が流れてきました。


おばあさん?「おお、桃だ」


  おばあさん?はさっそくその桃を家へ持って帰り、おじいさんへ見せました。


おじいさん「いやちょっと待って」

おばあさん?「何だ?おじいさん」

おじいさん「ええーっと…僕は今回のキャストにすごく突っ込みたい事があるんだけど…」

おばあさん?「ねずみからおじいさんへ昇進したじゃないか。他に何か不満でもあるのか?」

おじいさん「お前だよお前!」

おばあさん?「ん?」

おじいさん「何でおばあさんが死神なんだよ!思わずおばあさん?って、名前も戸惑ってるじゃないか!」

おばあさん?「女組が他にいってしまったから、だそうだ」

おじいさん「で、何でよりによって死神?!」

おばあさん?「面白そうだったからだろう」

おじいさん「死神も死神で、口調とか少しは変える努力しろ!そんな口調の年寄りがどこにいるんだよ!」

おばあさん?「それは偏見だぞ。もしいたらその人に何とお詫び申し上げたらいいんだ」

おじいさん「少なくともおばあさんにはいないだろ!おばあさんには!」

桃「…おーい…早くここから出して欲しいんだが…」

おばあさん?「何と、桃が喋ったぞ」

おじいさん「桃の中だよ中!…って中に入ってるんだ?!」

桃(の中)「無理矢理詰め込まれたんだ。そろそろ酸素が足りなくなってきた…」

おじいさん「もうギリギリだ!」

おばあさん?「なるほど、空気穴を開け忘れたんだな」

おじいさん「は、早く割らなきゃ中から人魚の遺体が出てくるぞ!」

おばあさん?「それはさすがに目覚めが悪いな」


  おじいさんとおばあさん?は、大きな桃を割る事にしました。


おじいさん「…ところでこの桃…本物なんだろうか…」

おばあさん?「いや、違うな」

おじいさん「え、じゃあこれは一体…」

おばあさん?「何かこれぐらいの入れ物に、桃型のカバーを被せたのだろう」

おじいさん「これぐらいの入れ物って…」

おばあさん?「うーむ、何だろうか」

おじいさん「…はっ、まさか!」

おばあさん?「思いついたか」

おじいさん「これ…タルとか…」

おばあさん?「……」

おじいさん「……」

おばあさん?「それでは割るとするか(鎌を構える)」

おじいさん「そうだね(刃物を構える)」

桃(の中)「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺のタルなのかこれ!タルなのか?!」

おじいさん「せーの」

おばあさん?「とうっ」


  おじいさんとおばあさん?が桃を割ると、何と中から赤ん坊が飛び出してきたではありませんか。


赤ん坊「うわーっ!俺のタルがー!」

おじいさん「あっやっぱりタルだったみたいだね。ここにヒビが…」

赤ん坊「ううううっ…(泣き崩れる)」

おばあさん?「まあ、そう気を落とすな。このタルは大切に埋葬してやろうじゃないか」

赤ん坊「くそ…成仏しろよ…」

おじいさん「違うだろそれ!」


  おじいさんとおばあさん?は、赤ん坊を桃太郎と名付け、育てる事にしました。
  桃太郎はすくすくと元気に育っていきました。


桃太郎「おいおばあさん?腹が減ったんだが」

おばあさん?「おじいさん、桃太郎が腹を空かせているぞ」

おじいさん「こういうのはおばあさん?の役目だろ!」

おばあさん?「自慢ではないが、自分は台所に自ら立った事は1度もないな」

おじいさん「本当に自慢できない事だなあ!」

おばあさん?「という事で、頼む」

おじいさん「僕だって定住した事ないんだから台所の機能すら知らないよ!」

おばあさん?「これだから根無し草は…」

おじいさん「旅人全般に失礼だな!」

桃太郎「…海行ってワカメでも取ってくるか…」


  桃太郎は、自立心ある良い子に育ちました。
  そんなある日、桃太郎は鬼ヶ島に住んでいる鬼が悪い事をしているという噂を耳にしました。


桃太郎「鬼がそんな悪い事をしているのか…大変だな」

おじいさん「そうじゃないだろ!」

おばあさん?「そうだぞ。すごく大変なんだ」

桃太郎「なるほど、すごく大変なのか」

おじいさん「そうでもないだろ!」

おばあさん?「そんなに怒鳴っていると血圧が上がるぞ」

おじいさん「そうさせてるのはどこのどいつだ!」

桃太郎「お、落ち着けあらし…じゃなくておじいさん、刃物出てるぞ刃物!」

おじいさん「はあはあ…怒鳴りすぎて頭がくらくらしてきた…」

おばあさん?「寿命か?」

おじいさん「嬉しそうに聞くな!」

桃太郎「ところで、俺はこれからどうしたらいいんだ?」

おじいさん「…ああ、そうだった」

おばあさん?「それじゃあ飯を作ってくれ」

おじいさん「話が進まないから黙ってろ!」

おばあさん?「短気だな」

おじいさん「(無視)それじゃあ桃太郎、お前はこれから鬼退治に行ってきなさい」

桃太郎「何で俺が…」

おじいさん「え。…桃から生まれたから?」

桃太郎「それなのか?!」

おばあさん?「自分達が育ててやったんだから、言う事を聞いたらどうなんだ」

桃太郎「随分と偉そうな事を言うおばあさん?だな…」

おじいさん「さあ、という事だから行ってこい!話が進まないだろ!」

桃太郎「行くしかないのか…とほほ…」


  こうして桃太郎は、鬼退治に出掛ける事になりました。


おばあさん?「よし桃太郎。これを持っていけ」

桃太郎「えっ…これは…?」

おばあさん?「桃太郎といえば、おばあさん特製のきびだんごだろう」

桃太郎「おばあさん?特製…?!」

おじいさん「じゃあこのだんご、死神…じゃなかった、おばあさん?が作ったの?」

おばあさん?「もちろんだ」

おじいさん「だんご作れたんだ?」

おばあさん?「だんご作りなんて、簡単な事だ」

おじいさん「へえー」

桃太郎「台所に自ら立った事無いって言ってたような…嫌な予感がするぞ…」

おばあさん?「そこらへんの土に水を少し混ぜて丸めれば、それらしく見えなくも無いからな」

おじいさん「きびでもだんごでもないだろそれ!」

桃太郎「予感が的中した…!」

おばあさん?「まあ時間もないし、それを持っていくが良い」

桃太郎「泥だんごをか?」

おじいさん「…ま、まあ、持たないよりはマシだよ、多分」

桃太郎「いや…持たない方がマシだと思うんだが」

おばあさん?「つべこべ言わず行って来い」

おじいさん「いってらっしゃーい(晴れやかな笑顔で)」

桃太郎「ううっ…」


  こうして桃太郎は、おじいさんとおばあさん?に見送られながら鬼ヶ島に出発したのでした。


おじいさん「ああーやっと出番が終わった…裏で寝とこ」

おばあさん?「もう終わりか…もう少しは出番がほしかったな」

おじいさん「お前は十分だろ!旅に出る前にこんなに長くなってるし!」

おばあさん?「人生そんなものだ」


  桃太郎が1人で歩いていると、目の前に1匹の犬が現れました。


犬「ちょっと、そこの男待ちなさい」

桃太郎「随分と怖い犬に出会ってしまった…」

犬「失礼ですね。こっちは前の話が長引いて出番が遅れた事に腹が立ってるんですからね」

桃太郎「それは大体おばあさん?のせいだろ!おばあさん?の!」

犬「言い訳は聞きません」

桃太郎「…はい…」

犬「ところで、これからどこに行くんですか桃太郎さん」

桃太郎「えーっと…これからちょっと鬼ヶ島に行って鬼を退治しに行く所…です」

犬「なるほど…ね」

桃太郎「……」

犬「……」

桃太郎「…なあ…」

犬「何ですか」

桃太郎「仲間にはならないのか…?」

犬「はっ(鼻で笑う)」

桃太郎「鼻で笑われた?!」

犬「仲間になるには、それなりのものを頂かないと、ね」

桃太郎「…はっそうかきびだんごか!」

犬「まあ、今回はきびだんごだけで我慢してやりますよ」

桃太郎「やっぱり偉そうだな…よし、ちょっと待ってくれ…(袋を取り出す)」


  桃太郎は、犬にきびだんごを差し出しました。


犬「…何ですかこれは」

桃太郎「…きびだんご…だとおばあさん?は自称してた…」

犬「へえーきびだんごですか、この、どう見ても泥が主成分だとしか思えない丸形の物体が、ね」

桃太郎「…やっぱり駄目か…」

犬「仕方ありませんね…話も進まないし、ついていってやりますよ」

桃太郎「え、いいのか、泥だんごで」

犬「あなたが食べて下さい」

桃太郎「そ、それだけは無理だ!」

犬「人魚でしょう、このぐらい食べてみたらどうなんですか」

桃太郎「人魚を何だと思ってるんだ!一般的に食べられないものは普通に食べられないんだぞ!」

犬「…期待はずれですね」

桃太郎「ガーン」

犬「まあ今回はここら辺で許してあげましょう。ほら、さっさと行きますよ」

桃太郎「…はい…」


  桃太郎が犬と共に歩いていると、目の前に1匹のサルが現れました。


サル「今回はサルかぁ…ちょっとショックだな…」

犬「少し項垂れているサルがいますよ」

桃太郎「今度はサルか」

サル「桃太郎さんに犬さん、これから鬼退治に行くそうですね」

桃太郎「仕方なく、な」

犬「しょうがないですから、ね」

サル「それじゃ、頑張ってきてくださいね。それじゃ…」

桃太郎「ってちょっと待て!何で踵を返すんだよ踵を!」

サル「…だってめんどくさいし…」

犬「相変わらずやる気がありませんね少年君もといサルさんは」

桃太郎「でもそれじゃあ話が続かないじゃないか」

サル「サル1人ぐらい抜けても別に良いような気がするんだけどなぁ」

犬「来なさい」

サル「…はい…」

桃太郎「この中の最強が犬って…」

犬「何か?」

桃太郎「いえ何でもありません」

犬「ところで、きびだんごは良いんですか?」

桃太郎「…ああそうか、仲間にするにはきびだんごを…」


  桃太郎は、サルにきびだんごを差し出そうとしました。


サル「ちょっと待って、そのきびだんごって…おばあさんが作ったものだよね?」

桃太郎「ああそうだ、おばあさん?が作ったものだ」

サル「確かおばあさん役って、死神だったよね?」

桃太郎「そうだ」

サル「いらない(即答)」

桃太郎「きびだんごを読まれた?!」

サル「どうせ泥だんごとかでしょ、死神の事だし」

犬「さすが、伊達に一緒に過ごしているわけではありませんね」

桃太郎「困ったな…このままだとこの泥だんごがかなり余ってしまう…」

サル「捨てればいいじゃん!泥なんだし!」

桃太郎「こう、ここまで綺麗に泥だんごが作られていると何だかもったいなくてな…」

犬「シロさんあたりだったら食べるかもしれませんね」

桃太郎「いや…さすがにシロでも泥は…」

サル「もうどうでも良いから早く行こうよ、早く帰りたいし」

犬「そうですね、行きましょう」


  桃太郎が犬とサルと共に歩いていると、目の前に一羽のキジが現れました。


キジ「もっもたっろさーん!おだんご頂戴ー!」

桃太郎「本当にシロが出てきてしまった…」

キジ「ねーねー桃太郎ってきびだんごくれるんでしょー?早く頂戴よー!」

犬「最初からだんご目的ですか」

キジ「だってー!だんごくれるっていうからキジになったのにー!」

サル「だんごに釣られたんだ…」

桃太郎「…い、良いのか?このきびだんごで良いのか?」

キジ「えー?このきびだんごって、どのきびだんごよー?」

桃太郎「これだ」


  桃太郎は、キジにきびだんごを差し出しました。


キジ「美味しそうー♪」

桃太郎「ほ、本気か?!」

サル「まさか、泥だって気がついてないんじゃ…」

犬「どう考えても、泥なんて体に悪いですよねえ」

キジ「あーん♪(泥だんごを食おうとする)」

桃太郎「ま、まま待てシロ…じゃなかったキジ!さすがにそれは!それはやめろ!(だんごを取り上げる)」

キジ「なんでよー!あたしこれだけを楽しみにしてたのにーっ!」

桃太郎「え、えーっと…」

犬「代わりのものを渡すしかありませんね」

桃太郎「代わり?」

サル「でも今食べ物なんて持ってないよ」

犬「そうですね…」

キジ「じゃあ、じゃあ、後で欲しいものがあるのー!」

桃太郎「欲しいもの?」

キジ「それくれたら許してあげるわー!」

サル「どうするの?」

犬「これじゃああげるしかないでしょう」

桃太郎「で、何が欲しいんだ?」

キジ「きびだんご山盛りー!後で買ってねー!」

桃太郎「…シロの山盛りって…」

犬「ちゃんと買ってあげて下さいねウミさん、いや、桃太郎さん」

サル「頑張ってね」

桃太郎「えっ俺だけなのか?!買うの!」

キジ「よろしくねー!」

桃太郎「…ううっ…」


  こうして桃太郎は、犬とサルとキジと共に鬼ヶ島へと向かいました。
  そしてついに、鬼ヶ島の大きな門の前に辿り着いたのです。


桃太郎「色々あったが、結構あっさりとここまで来れたな」

犬「一番の受難は仲間達との出会いでしたね」

キジ「ねーこれどうやって開けるのー?」

サル「鍵がかかってるみたいだね」

桃太郎「(ピンポーン)すいませーん」

サル「って普通にチャイムがあるし!」

鬼@「(ドアの向こうから)へいへい、何か用か」

桃太郎「鬼を退治に来た桃太郎なんだが」

鬼@「やっと来たのかよ。さー入った入った!」


  門は、鬼の手によって開けられました。


サル「あっさり入れたし…!」

犬「人生苦ありゃ楽ありですよ」

サル「苦も無かったような」

キジ「入れるんだから良いじゃないー!」

桃太郎「よし、行こう」


  桃太郎たちは、鬼たちと向かい合いました。


鬼@「よーしお前ら!少し言いたい事があんだけどよ」

桃太郎「言いたい事?」

犬「手短にお願いします」

鬼@「今回のキャストについて!」

サル「何?おばあさん?の事?」

鬼@「いや、それもあるけどよ、最初キャスト見た時一番最後見てあれ?って思わなかったか?」

キジ「えー?一番最後って誰がいたかしらー?」

鬼@「鬼Aの役が、猫だろ猫!」

鬼A「にゃーん」

サル「あ、コバ」

犬「私はあえてつっこみませんでした」

鬼@「なーんでオレの相方が猫なんだよ!他の奴連れてくれば良かったじゃねーか!」

鬼A「にゃあーん」

サル「ほら、コバが怒ってるよ」

キジ「差別はいけないのよクロー」

桃太郎「クロじゃなくて、鬼だぞキジ」

鬼@「だってこれじゃどっちが勝つかなんて丸分かりじゃねーか!」

犬「じゃあ、一対一でやれば良いでしょう」

桃太郎「…もしかして、俺がか?」

犬「いえ、それじゃ負けるの確実なんで」

桃太郎「そんなハッキリ言わなくても…」

犬「私がやりましょう。忠実な犬らしく、ね」

鬼@「待て待て待て、犬が拳銃なんて持つかよ!」

犬「世の中何が起こるか分かりませんよ」

鬼@「そんなんで納得できるかっ!おい相棒!助けてくれ!」

鬼A「ニャン」

鬼@「あっこら逃げんな!薄情者!」

キジ「早く降参しちゃいなさいよー!あたしきびだんご奢ってもらわなきゃいけないんだからー!」

桃太郎「げっそうだった…」

サル「うん、早く帰りたいし、早く降参してよ鬼」

鬼@「男が降参なんて出来るわけがな…」

犬「(拳銃を構える)」

鬼@「……参りました…」


  こうして桃太郎は、鬼を見事退治?する事が出来たのでした。


桃太郎「っておい!俺が全然活躍してない気がするぞ!」

鬼@「オレも!オレも活躍してねーぞ!出番かなり少なかったし!」

犬「私は満足しましたよ?」

キジ「あたしもー!今からきびだんご食べれるものー♪」

おばあさん?「結局誰も自分のお手製きびだんごを食べてはくれなかったか…」

おじいさん「ガッカリするな!きびだんごでもない物作ったくせに!」

サル「あー早く帰って宿題しなきゃ…」

鬼A「ニャアーン」


    −めでたしめでたし−






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