有名な大富豪「豊田」さんの屋敷。
そこには、沢山の高価な者たちがかき集められています。
そこに、一通の手紙が届いたのです。
『貴殿の大切なものを頂きに参上します 怪盗メロンパン』
「なっなんて事だ!怪盗からの予告状だと?!」
「あなた、どうするザマス!」
「むむむ……こうなったら仕方が無い」
困りきった豊田さんは、プロに頼む事にしました。
プロ、つまり……名探偵を呼んだのです!
「今回の仕事は金になりそうだな、田中!」
「迷宮入りにならないようせいぜい頑張ってよねタッちゃん」
日記連載 〜名探偵タッちゃんvs怪盗メロンパン〜
始まり!
第1話「呼ばれた名探偵」
名探偵タッちゃんは、大富豪の豊田さんに呼ばれました。
何でも、怪盗メロンパンからの予告状が届いたというのです。
「怪盗メロンパンとはどんな奴なんだ田中」
「どこまで無知なんだてめえ。今とっても有名な怪盗なんだよ」
「有名だと?」
「色んな金持ちの大切なものを奪っていく奴なんだ」
「大切なものか…豊田さんからは一体何を奪うんだ」
タッちゃんと助手の田中は豊田さんのうちにたどり着きました。
とっても豪華で大きな家です。
「すごいな田中!すごく大きな家だ!」
「タッちゃんもここまで金持ちなら給料良かっただろうに」
果たして、狙われた大切なものとは、一体何なのでしょうか。
〜つづく〜
第2話「怪盗からの予告状」
「名探偵タッちゃんですね、豊田です」
とても豪華な屋敷に入ると、豊田さんがやってきました。
横には、ゴージャスな雰囲気の奥様もいます。
「俺が名探偵タッちゃんだ、こっちは助手の田中」
「馬鹿の助手田中です」
「馬鹿じゃない名探偵だ。さっそくだが、予告状とは」
「ええ、これなんですが」
豊田さんは、一枚の紙を手渡してきました。
タッちゃんと田中は2人でそれを覗き込みます。
そこには、丁寧な字でこう書かれていました。
『貴殿の大切なものを頂きに参上します 怪盗メロンパン』
「何でメロンパンなんだ、アンパンでもいいじゃないか」
「違う馬鹿。具体的に盗むものは書いていないよタッちゃん」
「俺はクリームパンが好きだ」
「聞け馬鹿。豊田さんあなたの大切なものとはなんですか?」
「田中、さっきから馬鹿馬鹿言い過ぎじゃないか?」
助手から馬鹿馬鹿言われまくりのタッちゃん。
タッちゃんは名探偵としての威厳を取り戻せるのでしょうか。
「違う馬鹿!豊田さんの大切なものは一体何なのか、だろ!」
〜つづく〜
第3話「大切なもの」
「私の大切なもの、それは決まってるでしょう」
大切なものは何かを尋ねると、豊田さんは胸を張りました。
とても自慢で大切なものなのでしょう。
「国宝級のクリームパンか?」
「クリーム塗りたくるぞ。とても高価なものとかですか?」
「私の大切なもの、それは」
豊田さんはサッと一枚の写真を取り出して言いました。
「大事な大事な私の一人娘だー!」
「「ナマモノ?!」」
「そんなわけないザマス!人間盗むわけ無いザマショ!」
奥さんが豊田さんにつっこみました。
なるほど、奥さんが豊田家のつっこみ役のようです。
奥さんは眼鏡をクイッと持ち上げながら言いました。
「おそらく、時価数億円の宝石だと思うザマス」
「数億円の宝石だと!これを盗めばすごいもうけだぞ田中!」
「能無し探偵!こういうのは黙って計画しとくんだよ!」
宝石を狙うタッちゃんと田中。
果たして、怪盗メロンパンは2人より先に盗めるのでしょうか。
〜つづく〜
第5話「守られた宝石」
タッちゃんと田中は、ある部屋へと通されました。
そこは、例の狙われていると思われる宝石の保管室でした。
部屋の真ん中に、ガラスケースに入った宝石があります。
「これが時価数億円の高価な宝石か田中!」
「タッちゃんと宝石じゃ輝き具合は月とミジンコだね」
「この部屋を守るため、周りは十数人の警備員を配置してます」
豊田さんは、敬礼する十数人の警備員を見せてくれました。
他にもこの部屋には色んなものが仕掛けられているようです。
「このガラスケースは鉄砲でも突き抜けられませんし」
「すごいな、田中のつっこみガードにしたいぐらいだ」
「これぐらいじゃガードは無理だね」
豊田さんは、数々の仕掛けを見せて胸を張りました。
「これで怪盗メロンパンも手は出せないと思って……」
「いやちょっと待った!この宝石、俺が預かっておく!」
「「ええ?!」」
いきなりそんな事を言い出したタッちゃんに皆はビックリしました。
「タッちゃん、それはどういう事です!」
「盗むのは夜中だって言っただろタッちゃん!」
「実は、俺に秘策があるのだ」
「「おお!」」
果たして、タッちゃんの秘策とは何なのでしょうか。
〜つづく〜
第6話「タッちゃんの秘策」
タッちゃんは、宝石を手に取りました。
田中はそのまま1人でとんずらするんじゃないかと心配してます。
「タッちゃん、秘策って一体何なのさ」
「簡単だよ田中。この宝石を俺が持っているとどうなる?」
「タッちゃんが余計みすぼらしく見える」
「違う。怪盗がこの宝石を盗みにくくなるんだ」
「な、何ですと?!」
びっくりする豊田さんに、タッちゃんは得意げに胸を張ります。
「考えてもみろ!わざわざ特別に部屋まで作っても怪盗というもんは盗みに来るんだ。こうやって自分で持ってればすむことじゃないか」
「なっなるほど!さすが名探偵ですね!」
「話としてはとてつもなくつまらないものになるけどね」
「守ればいいんだ守れば!」
物語の名探偵にあるまじき秘策で怪盗に立ち向かうタッちゃん。
果たして、この秘策は成功するのでしょうか。
〜つづく〜
第7話「怪盗メロンパン現る」
その時、ガシャンとガラスが割れる音がしました。
しかし宝石のあるこの部屋ではなく、別の部屋からです。
「怪盗クリームパンか!」
「クリームから離れろ!メロンだメロン!」
「しかし、別の部屋から音が聞こえるなんて」
うろたえた豊田さんが部屋のドアを開けたその時です。
隣の部屋の窓に足をかけて、怪盗メロンパンが姿を現しました。
「遅かったな豊田さん!あなたの大切なものは頂いたよ!」
「なっ何ですと!しかし宝石はここに…!」
「つまり狙いは宝石じゃなかったんだねタッちゃん!」
「……おお……」
「タッちゃん?」
タッちゃんの様子がおかしい事に田中は気が付きました。
タッちゃんは、一歩足を踏み出して、怪盗メロンパンに言います。
「お前、女だったのかー!騙されたー!」
「そこか!お前の驚きはそこか!」
「美女怪盗メロンパンとはこの私のことさ!」
名前だけじゃ性別の分からない人がゴロゴロいます。
まさか、タッちゃんまで……。
「タッちゃんはダメ男だよ」
〜つづく〜
第8話「盗まれたもの」
タッちゃんはダメ男だと確認して安心していた所。
怪盗メロンパンが大きな大きな袋を取り出してきました。
人一人入ってそうな袋です。
「ほうら、これがあんたの大切なものだよ」
「宝石ではなく、一体何を盗んだというんだ!」
「宝石よりも高価なものか…楽しみだな田中」
「袋だ、こっちも袋用意しなきゃタッちゃん」
ワクワクしながら待っていると、袋が開けられました。
その中に入っていたのは……人間の男でした。
「あんたの大切な1人息子は頂いた!」
「息子か!息子だったか!」
「惜しかったな豊田さん」
「娘なら別の部屋で厳重に監視していたというのに!」
「娘は監視してたのか!」
盗まれた豊田さんの息子。
タッちゃんは取り返すことが出来るのでしょうか。
〜つづく〜
第9話「盗まれたもの」
タッちゃんは一歩前に踏み出して、語りかけました。
「こら、何で豊田さんの1人息子を盗むんだクリームパン」
「どうしてもメロンは嫌か。嫌なのかダメ男」
「何故盗むか、だって?」
盗賊メロンパンはニヤリと笑って、言いました。
「この息子と結婚したら玉の輿だろうが!」
「そんな結婚ありか!」
「ありだ!というわけでさらば!」
盗賊メロンパンは窓から飛び降りようとしました。
しかし、そこに飛び込んできた人影があります。
何と、タッちゃんです。
「待てー!俺も玉の輿になりたい!」
「何?!」
ビックリした怪盗メロンパンは袋を落としてしまいました。
下から悲鳴が上がりますが、誰も聞いてはいません。
田中が慌ててタッちゃんに駆け寄りました。
「タッちゃん!玉の輿なら一人娘を狙え!」
「あっそうか!さすが田中!」
果たして、タッちゃんは玉の輿になれるのでしょうか。
〜つづく〜
第10話「落ちた息子」
「いや、娘は渡しませんよタッちゃん」
「畜生!」
玉の輿の道を絶たれたタッちゃん。
今度こそ、怪盗メロンパンと向き合いました。
「さあ怪盗メロンパン、豊田さんの息子を返すんだ!」
「それは無理だね!」
「何だと!」
「さっきそこから落ちたから!」
「マジで?!」
タッちゃんが下を覗きこむと、ピクピクする袋が落ちています。
田中が勝ち誇った顔で言いました。
「それじゃあ、お前も盗めないと言う事だな!」
「うっ」
怪盗メロンパンは言葉に詰まりました。その通りだったのです。
うろたえる怪盗メロンパンに、タッちゃんは言いました。
「おいクリームパン、お前、間違っていないか」
「え……?」
「金は結婚なんかで手に入れるものじゃない」
タッちゃんは、拳を作って言いました。
「自分の力で手に入れるものなんだ!」
〜つづく〜
第11話「怪盗メロンパンの終わり」
タッちゃんの言葉を聞いて、怪盗メロンパンは泣き崩れました。
「そんな言葉、初めて言われた…!」
「言う人もいないだろ」
「何を言う田中、俺がいるじゃないか」
「タッちゃん人間じゃねえだろ」
「そっそうだったのか!」
「名探偵タッちゃん!」
怪盗メロンパンは、感動した顔でタッちゃんに抱きつきました。
「あんたのために今度から怪盗クリームパンになってみせる!」
「本当か!でも俺一番好きなのはチョコアンパンなんだ」
「タッちゃんそれお菓子だから」
「何でもいい!あんたに認められる怪盗になってみせるからな!」
「名探偵に認められる怪盗って」
「じゃっさらば!」
怪盗メロンパンは田中のつっこみも聞かずに去っていきました。
これで、豊田さんの大切なものは守られたのです。
〜つづく〜
最終話「怪盗タッちゃんと田中」
こうして、名探偵タッちゃんの仕事は終わりました。
豊田さんからは沢山のお礼を貰ってしまいました。
息子さんがどうなったかは、分かりません。
「はあ、またしばらく仕事が来ないのかなタッちゃん」
「はははは!田中、案ずる事は無いぞ」
「何で?タッちゃんの財産を全部くれるとか?」
「俺の財産は名探偵としての誇りだけだ」
「カスのような財産だな。で、何かあるの?」
タッちゃんは不敵に笑いながら懐に手を入れました。
そして、田中に中から出したものを見せたのです。
それは何と……。
「宝石?!」
「豊田さんから預かって、そのままだったのだ!」
「タッちゃん最高!さっそく質屋に持っていこう!」
「そうしよう!これで今夜は焼肉だー!」
タッちゃんと田中は仲良く質屋に駆けていきました。
皆さん、ネコババには気をつけましょうね。
〜おわり〜
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