嗚呼懐かしきあの頃 −ウミ君4歳−



ここは、海人魚の国。他の人魚には分からないような場所に存在している。
国の半分は海で半分は陸という、何とも人魚らしい国だ。

この国を治めている王キングには、3人の娘と1人の息子がいた。今その4人の子ども達は、波打ち際で仲良く遊んでいる所だ。
この前4つになったばかりの末っ子の隣に立っていた長女マリーちゃんが、うーんと伸びをする。


「ああ、いい天気ねえ。絶好の水泳日和だわ」


すると、その足元で一生懸命砂の山を作っていた長男ウミが、マリーを見上げて言った。


「ねぇたまー」
「たま、じゃないの、さ、ま」
「ねぇさま」
「よろしい。で、どうしたのウミ?」
「セイねぇた…セイねぇさまとリーネねぇさまが」
「ん?」


言われて見てみると…さっきまでそこで泳いでいたはずの次女と三女がいつの間にかいなくなっていた。


「あらあら、あの2人どこに泳いでいったのかしら」
「たこしゃんたちと、あっちいっちゃった」
「しゃん、じゃないの、さ、ん」
「たこさん」
「よろしい。…あっちって、お母様に叱られちゃうわねえ」
「誰が、誰に叱られるって?」
「「!!」」


危険だから言ってはいけないと常々言われている入江の方を2人で眺めていると、背後から声を掛けられた。
そこにいたのは…。


「かぁた…かぁさま!」
「あらーウミ、お山作ってたの?大きいわねー」
「えらい?」
「偉い偉い。よしよし」
「お母様ったら、びっくりさせないでよ」
「あなた達の様子を見に来たのよ」


ウミの頭をなでながら、母クイーンは微笑んだ。そしてすぐに、呆れたようにため息をつく。


「もう、あの子達ったら。あそこには大ダコがいて危ないって言ってるのに」
「どうすればいいかしら、お母様」
「しょうがないわね…連れ戻してきましょう。おいで2人とも」
「はい」
「はぁーい」


3人で入江に辿り着くと、セイとリーネの2人はちゃんとそこにいた。
しかし、その背後に横たわっていたのは危険だったはずの大ダコで。


「ごめんなさいお母さん…夕飯にタコが食べたくなって…」
「私は止めたんだ。だけどリーネがどうしてもって」
「あーずるーいセイお姉ちゃん!お姉ちゃんだって食べたがってたくせに!」
「その辺にしときなさい2人とも」
「「…ごめんなさい…」」


しゅんと俯く2人を見て、クイーンは深いため息をついた。
結構危険な大ダコ相手に無傷で勝つとは、一体娘達の将来はどうなってしまうのだろう。


「夕飯を手に入れたことは褒めてあげたいけれど、ここには来ちゃいけないってあれほど言ったわよね」
「「はい…」」
「もし怪我でもしてたらどうするの」
「「ごめんなさい…」」


さらに説教しようとしたその時、トコトコとウミが歩いてきて、クイーンの袖をギュッと掴んだ。


「かぁたまー」
「ウミ、さ、ま、でしょ?」
「かぁさま」
「よし。で、どうしたの?」


するとウミは、きゅっと眉を寄せて言ってきた。


「セイねぇさまもリーネねぇさまも、おこっちゃやだ」
「え?」
「ぼくもたこしゃんたべたいから、いいでしょ?」
「タコ、さ、ん」
「たこさん」
「よし」


クイーンは、まったくもう、と笑いながらウミをなでた。


「そうね、タコさん食べれるから、今日はこの辺にしておきましょうか」
「「本当?!」」
「2人とも、ウミに感謝するのよ」
「ありがとうなウミ」
「ありがとー!」
「えへへー」


わいわい騒ぐ妹弟を眺めながら、母親と共にマリーがニコニコ笑う。


「ウミったら、将来どんな人魚に育つのかしら」
「そうね、今のまま優しい子に育ってくれればそれでいいわ」


親子は、仲良く大ダコを引きずりながら家へと帰っていった。

04/04/23











誰だこれ。
何故かウミ大好きの妹を満足させるためだけにさっさと書いたものです。恥以外の何者でもありません。
でもある意味笑えるので晒します。クソ短いしオチまでないのに晒します。
ウミ物語というより、人魚親子物語と言った方が正しいかもしれませんな。